10%内外高い秋・冬物がマーケットの主流。
07年1月以降の札幌市マンションマーケット。春・夏物は年内に在庫が払底か
いよいよ秋商戦が活発化し始めてきた。今年は戸建て持ち家が好調で、少し今までとは違う様相を示している。好調だったマンションが耐震偽装問題などで上半期が不調だったが、8月以降は挽回を目指して供給が再開され始めている。
ここにきて聞こえてくるのは、用地難と資材高で秋口物件が軒並み10パーセントから15パーセント程度値上がりするという話。実際新規発売物件の価格が上がっている。しかし、今のところ「上がる理由」がある程度明確になっている物件が多く、成約率に影響は少ない。これは中央区円山や美術館前などの「スーパー立地」物件ともいえるもので、それなりに「高い理由」がはっきりしているせいか、高い成約率を示している。一方、郊外に立地しながら10パーセント程度上がり、かつ地下鉄駅から遠い物件などでは「高い理由」が明確に伝わらず、苦戦している。
このように「春・夏」物の価格と「秋・冬」物の価格が明確に違うというマーケット環境自体珍しい現象だが、ほぼ、1400戸前後ある春・夏物の在庫が、その価格優位性(安い)によって、マーケットからなくなるのに4ヶ月から5ヶ月かかると思われるため、今年一杯は、「高い理由」が明確でない「秋・冬」物は苦戦、その結果、相対的に安い「春・夏」物は早期にマーケットからなくなるということになりそうだ。そうなると1月以降はマーケットは「秋・冬」物だけとなり、価格高が鮮明になっていく。そうして1月1日現在の公示価格が発表される月には、札幌市「全面地価高」ということになっていくだろう。
全面地価高となる3月以降のマーケット このように、今年の春以降始まった札幌市の地価回復の傾向は、エリアのまだら現象から、札幌市全面高に一年で変化し、来年春には全面高の様相となるだろう。ここでは、地価下落から上昇へ、デフレからインフレへという大きな価値変化が始まることになる。
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デフレ的価値観とインフレ的価値観の「踊り場」が・・・
価格下落から上昇へ、デフレ的価値からインフレ的価値観へという大きな「価値変化」の時代では、早い舵きりが求められる。金利や価格の上昇は、考えているよりスピードが速い。デフレ時代は、時間とともに価格が下がるから、モノの購入は「先送り・後回し」となる。しかし、インフレの時代は、時間とともに価格が上がるから「早く買え」ということになる。
この価値観の変化がよりマーケットでの行動の違いを明確にするため、勝ち負けが際立つ現象が起きる。このため、波及力が強く、スピードが速くなるのである。実際、土地購入では、値付けの決定的違いとなって現れ、高い価格を提示するところ以外は仕入れができない状況になっている。
また、金融機関の「融資条件緩和傾向」も激しく、金利高でも融資の条件が緩和しつつある。このため、怖いのは市場の暴走。マーケティング分析を無視する動きには、注意が必要だろう。来春以降の冷静なマーケティングが求められる。
(不動産市況アナリスト 志田真郷)06年9月
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