中央区に47%集中した2004年マンションマーケット
平成16年のマンションマーケットの概要がまとまった。
全体では3737戸の新規発売、3814戸の成約ということになった。発売戸数は昨年より9.6パーセント減、成約は0.6パーセント減で、供給が調整されたが、成約ではほぼ昨年と同じ規模となった。
最大の特徴は発売物件が中央区に集中したことで、全体の47パーセント、1741戸が中央区で発売されたこと。01年に1401戸で41パーセントを占めて以来、最高の中央区集中となった。供給戸数は毎年変動があるが、物件数が少ない中での中央区集中は、在庫過剰感に直結することから、05年マーケットは、立地分散が進むものと予想される。また、中央区集中の裏返しの現象として、手稲区と清田区は発売がゼロとなった。05年以降に販売計画が予定されているが、04年マーケットを象徴する出来事といえるだろう。
もうひとつの特徴は、これまで3LDKと4LDKというファミリータイプがほとんどを占めていた商品構成に対して、2LDKの増加が目立つようになり、商品の多様化が一層進んだこと。リタイアメント層や単身女性がマーケットに登場し、従来のファミリー一辺倒のマーケットから大きく変化し始めていることである。この背景には、家族構成の変化と、住宅金融公庫のシェアの急減が示す、住宅ローンの変化があり、従来の「中・低所得層」のマンション取得が難しくなりつつあるという背景がある。
また、用地難もあり、地下鉄利用物件が減少、JR利用物件が増加したことが3つめの特徴。特に桑園・琴似・札幌駅利用の大型物件が登場し、従来の地下鉄近隣型マンションというイメージから、新たな都心性がJR駅物件として形作られようとしている。05年には手稲駅や札幌駅物件が登場することから、一層そのイメージが強くなるものと考えられる。
つまり、札幌のマンションマーケットが大きく変化し始めているということが鮮明になった04年マンションマーケットだった。
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販売手法にも変化が、オープンセミナーもそのひとつ・・・・
マンションマーケットでの大きな変化がいくつか始まっている。前頁でみたように、家族構成の変化、住宅金融の変化、立地の変化などから、供給各社は様々に販売戦略を変化させてきている。一方で、販社を持たない供給デベロッパーも多く、商品開発と販売計画との流れが必ずしもスムーズに行っていないケースも目立つようになっている。
開発コンセプト、商品コンセプトの明確化から始まるマンション事業が、販売部門だけは別会社という形になると、実際の販売局面で、どれだけ明確にユーザーに対して商品にこめられたメッセージが伝わるか、という問題がある。商品コンセプトは、パンフレットや広告で表現されたとしても、実際にユーザーと直接対応するのは「販社」だからである。
このような課題を解決しながら、より明確にユーザーに商品コンセプトを伝えていく手法として「オープン時セミナー」方式が一定の成果を挙げ始めている。
開発コンセプトや、設計コンセプトをより具体的伝えられること、マーケット全体における当該物件のポジショニングがより明確にユーザーに伝わることなど、モデルルームだけに頼る手法に比較すると、より優位なポイントが目立つ。チラシ万能の告知手法の限界がささやかれ、モデルルーム来場数の減少が嘆かれているが、新たなユーザーとの接点探しを考え始めなければならない時期に来ているということだろう。
2005年1月
不動産市況アナリスト 志田真郷
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