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マーケッターの間取論目次
家族が変わる・間取りが変わる:間取り論再考1
住宅ニーズの質的変化と供給のミスマッチが・・・・・


 マーケティングというのは、マーケット(市場)に対して企業がどのようにかかわっていくのかという方針のことであり、その方針を立てるための様々な活動全体を指している。


 ユーザーが望んでいる商品(住宅)を作り出し、それを適切な告知方法で知らせていけば商品が売れ、企業の業績が上がるとともに顧客の満足度も上がっていくことになる。いい商品ができれば企業にとってもユーザーにとっても幸せな関係が出来上がる。


 しかし、残念なことに幸せな企業と幸せなユーザーばかりではない。だからこそマーケティングが必要だということになる。双方が幸せになるための方法論や不幸の原因を解明して対策を建てていくことがマーケティングに求められているからである。


 そういう立場で仕事をしている中で、最近、住宅の「間取り」がとても大切な要素になってきている。 それは、住宅を求める層の「質」的な変化がはっきりしてきているのに対して供給側が従来型の商品を提供している場合が多く、かなりの「ミスマッチ」がおき始め、明らかにユーザーが求めるものとそうでないものが明確になってきているからだ。


 分譲住宅と注文住宅    


 持ち家は分譲住宅と注文住宅に分かれる。分譲住宅は、建売住宅と分譲マンションからなっている。いわば住宅の「既製服」である。注文住宅は、発注者としての「施主」が住宅を建設する工務店やハウスメーカーに住宅の設計と建設を依頼するもので、発注者の意思が住宅という商品の形になっていく。つまり、注文住宅というのは発注者と住宅事業者との共同作業によって、その都度新たに生まれていくものである。特定の住宅商品がはじめから存在するのではなく、ユーザーの中にある住宅に対するイメージや希望を具体の形にしていくものである。だから、注文住宅のマーケティングは、確かな技術と能力を持った集団の魅力をアピールしていくことに主眼がある。受注量の確保が目的にあるからである。


  だが、ユーザーの住宅に対するイメージや希望はモデルハウスや広告や雑誌やテレビドラマなどによってある程度方向づけられている。住宅にも流行があるのはそのためであり各ハウスメーカーの「企画住宅」などがそのイメージ付け商品として広告の最前線に投入される。


 だが、そのことに実は矛盾が含まれている。メーカー側のアピールするものとユーザーが求めるものが企画商品という形になってすでに具体化されてしまっている、ということは、人々の暮らし自体が企画化されているということとほとんど同じだからである。注文住宅産業はライフデザイン産業でもあるのである。しかし、注文住宅産業が果たしてどのくらい人々の住宅に対するイメージや希望を提案できているのか。前段で述べたように、住宅を求める側と供給する側のミスマッチが起きているという筆者の実感からすれば、かなりの矛盾があるといわざるを得ない。人気を集めているテレビ番組の「劇的ビフォーアフター」などは、現実に起きている住宅と家族の現実とのミスマッチに焦点をあて、「空間の魔術師」や「匠」達が劇的に空間を変化させてミスマッチを解消していくさまが評判を呼んでいる。


 分譲住宅は冒険する


 注文住宅も企画住宅によるイメージ付けが進んでいくと、注文住宅と分譲住宅の差はほとんどなくなっていく。


 しかし、決定的な差は、注文住宅はモデルハウスというイメージ商品と具現化される住宅との間に差があるのに対して、分譲住宅は、モデルとなっているもの自体が商品であるという点だ。立地条件(PLACE)、価格(PRICE)、間取り(PLANNING)の三要素から、売れるであろう商品が企画開発されて分譲される。


 現地で現物を見て買っていただこうというのが分譲住宅である。この分譲住宅のうち建売住宅(戸建)は、かなり供給戸数が減少していたが、ここ一、二年、都心部の建売としてやや増加傾向にある。戸建ての建売に対してかなり安定的に供給されて売れているのが分譲マンションである。札幌市内ではほぼ四千戸のマンションが毎年販売されている。


 分譲マンションの立地は地下鉄などの公共交通機関から近いことがほぼ常識化していて、最大でも歩いて十分以内、つまり都心の利便性が高い地域に供給されている。


 人口増加が0五年でとまり、0六年から全国で人口減少が始まる。こういう時代には人口の都心回帰が起きる。郊外の大規模な団地開発が不必要になり、かわって都心部の利便性の高いところに住居が求められる傾向が強まる。札幌市で中央区の人口減少が止まり増加に転じたのは平成七年のことである。つまり、大きな傾向としては住居の位置は郊外から都心へというのが大都市の傾向である。その視点から見ると分譲マンションには立地の優位性がある。


  しかし、都心の利便性の高いところに年間四千戸のマンションが供給されるということになると、当然にもかなりの競合物件が現れ、競争が激しくなる。この結果商品の内容であるプランニング面の著しい変化が分譲マンションに現れるようになった。この傾向は住宅金融公庫が行政改革の一環として業務を縮小し始め、住宅金融公庫利用率が低迷して、公庫による物件性能の基準化や販売方法の基準化などの制限が外れるようになって、ますます激しくなっている。分譲マンションでは、商品企画の進化が著しいのである。さらにまた分譲マンションは事業者が土地を買い、マンションを建設して販売する事業形式をとる。したがって売れなければ事業資金は回収できない。注文住宅のように土地を持っている人から住宅建設の注文をうける事業形式と違って、リスクを持っている。その分「売れること」が何にもまして絶対条件である。


  価格が安ければ売れるという考えもあるが、価格よりも商品内容としてのプランニングがマンション成約のポイントになっているのが現在の市況だ。だから分譲マンションは冒険し、積極的に新味のある企画を市場に投入していく。分譲マンションはプランニングの宝庫のようなところがある。
マンションは平屋である


  私の仕事は分譲マンションのマーケティング分析や企画支援のウェイトが高く、その面から住宅の間取りを考える機会が多いので、その考えのバックボーンを理解してもらうため、硬い話を書かせてもらった。連載初回ということもあって、前提条件の整理ということ容赦願いたい。この原稿は分譲マンションから始まっているプランニングの変化の大きな流れを確認することにある。


 分譲マンションはほとんどが平面で完成している住宅である。つまり、戸建でいう「平屋」のプランである。平均面積で約八十~百平米の平屋プランである。普通の戸建住宅が一階が二十平米前後で、ほぼ総二階建て(一階と二階の床面積が同じ)のものが主流であるのに対して際立った違いとなっている。平屋プランは生活が同じ平面で完結するように作られているので動線が多様化する。階段でパブリックスペースとプライベートスペースが上下に区分されている戸建は、プランの多様性が限られるのに対して、平屋は同じ平面でパブリックなリビングやバスルームとプライベートな領域である寝室が動線化される。また、マンションにおけるキッチンの多くは動線が二つ以上あり、生活のマネジャーである主婦への配慮が行き届いている。


 さらにひとつの分譲マンションにはプランがいくつもあり、マンションパンフレットについてくるプラン集を見てみると、さまざまな生活のシミュレーションが広がって楽しい・・・・などなど、マンションの面白さがいくつかあげられる。


 マンションは二人世帯が多い


 マンションを購入している世帯の平均的な家族数は、二・三程度である。つまり、多くが二人ないしは三人家族である。家族の最小単位である二人の住まいとしてマンションが利用されているのである。


  現在日本全体でも家族数の減少が顕著になっているが札幌市でも二千年の国勢調査では一人世帯と二人世帯をあわせると六一%を超えている。標準世帯といわれる四人世帯は一五%程度に過ぎない。最小単位である二人家族が増加しているのだ。若い二人から熟年の二人まで日本の新しい標準家族は二人であるとさえいえる状況にある。マンションの間取りが進んでいるとすれば、今後も増加していくであろう二人家族を中心とする少人数家族の住まいとして認知されている点にあると思われる。


女の家、男の家


 住まいは戦後の核家族化の中で、子育て時期に購入される家族の「巣作り」行動として位置づいてきた。夫は会社に出かけ、家に滞在する時間は限られ、住まいは主婦と子供が長時間滞在する空間としてあった。だから住まい作りのポイントは主婦と子供にあり、夫のための空間作りという観点はほとんど省みられなかったといっていいだろう。住まいの機能としてはキッチンなどの水周りが重視され、それに連続する明るいリビングダイニングが「明るい家庭」の象徴とされた。子供部屋の確保が優先されるために夫婦の寝室は比較的狭く、子供が教育期間を終えて独立すると子供部屋と主寝室とに夫婦が別就寝するケースも多いようだ。


 そのような戦後の核家族の住宅が女の家であるとすると、現在増えている二人家族の場合、男の相対的位置が上がり、住まいの意味の中に「男」の要素が入ってくる。それが「隠れ家」や「書斎」「DEN」などのブームとなって現れ始めている。


 さらにまた、07年問題といわれる団塊の世代のリタイアを契機に、多くの男たちが職場をリタイアし住宅に「帰ってくる」。一日一五時間近く外にいた男たちが住宅に帰ってくる。「アイルビーバック」とつぶやいて帰ってきたターミネイターのごとく、大量の男たちが住宅に帰ってくるのである。そのとき今の住宅は男たちにとって心地よい空間足りえているのだろうか。


 現在の住まいはインテリアからメンテナンスまで、ほとんどが女性に任されている。間取りについても女の立場から語られることがほとんどである。男の分際で間取りを語ることへの恐れを感じつつも、二人暮らしとは、個人と個人として生きつつも、同じ空間を二人で分かち合う生活スタイルであるとすれば、女性にお任せであってはいけないのであると考え、原稿を書かせていただいた。次回以降は、さらに具体的に間取りを語っていきたい。


雑誌りプラン掲載原稿(不動産市況アナリスト 志田真郷)
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